7月下旬、暑さがピークの中、昨年いぬねこの殺処分0を全国で初めて達成した
神奈川県動物保護センターに見学にいきました。
正直、都内からいくには、ちょっと遠いです、、、
電車・バスだと2時間、車だと1時間。今回は車でいけたのでラッキーでした。
まわりが畑に囲まれたのどかな場所です。
ちなみに、よく誤解されやすいのですが、
『神奈川県がいぬねこ殺処分0を達成した』というのは
ちょっと違うのです。
神奈川県動物保護センターというネーミングから、
神奈川県全体を管轄しているように思いがちですが、実はそうではありません。
↓見えづらいかもしれませんが、下記が管轄区域になります。
横浜市、川崎市、横須賀市、藤沢市、相模原市を除く地域がこのセンターの管轄となります。
上記5市は『保健所政令市』と呼ばれる、地域保健法第5条第1項の規定によって、
保健所を設置できる政令指定都市、中核市、および政令で定める市なのです。
※ただし、藤沢市と相模原市は収容施設がないので、動物たちは神奈川県動物保護センターに収容されます。
ちょっと複雑ですが、全国の都道府県はこのように細かく管轄が分かれています。
これまでに私たちが見学に行った東京や広島も同じです。
東京都は、東京都動物愛護センターが町田市と八王子市以外の地域を管轄しています。
ただし、この2市も収容施設がないため収容は東京都になります。
広島県は、広島県動物愛護センターが広島市、福山市、呉市以外の地域を管轄しています。
つまり、昨年のいぬねこ殺処分0は、
『横浜市、川崎市、横須賀市を除く神奈川県』の実績、が正しいです。
(快挙であることは変わりありませんけどね!)
今回の見学は、なぜいぬねこ共にゼロを達成できたのかを知りたいと思い訪問しました。
写真撮影OK。昔ながらの一日ごとにガス室へ移動するタイプの収容。中型犬の子が多くいました。
(猫は、写真撮影しそびれました。。。汗)
職員さんが丁寧にお話してくださり、
殺処分ゼロの成功のポイントは3つあるというのが私たちの結論です。
こちらいただいた資料です>神奈川資料.pdf
殺処分ゼロのポイント@ 数字の考え方を変える
神奈川県動物保護センター(以下、県センター)では
ガスや注射によって職員の方が動物を処分した数「致死処分」と
自然死「収容中死亡」で処分頭数を分けています。昨年は、
犬 収容中死亡 41頭 致死処分 0頭
猫 収容中死亡 69頭 致死処分 0頭
人が処分した子はゼロでしたが、病気や怪我等で死んだ子たちはいます。
助けようのない子たちの数を分けているのが、ひとつ特徴としてあるのかなと思いました。
このため、環境省が出している全国の殺処分数の一覧では、
県センターの殺処分数はゼロではありません。
例えば離乳前の子猫の場合
センターには5日間公示する義務があるため、この間は譲渡できません。
しかし、5日間放っておくわけにもいかないので、世話ができる外部のボランティアさんに預け、
公示5日以内に死亡した場合は収容中死亡としてカウントされます。
5日以降はボランティアさんに譲渡という形になります。
殺処分ゼロのポイントA 現場との絆を深めた所長さん
県センターでは2年前に就任した新しい所長さんが
現場の登録ボランティアさん(譲渡登録している団体や個人/以下登録ボラさん)と
積極的にコミュニケーションをとったそうです。
所長さん自ら「ボランティア通信」をつくり、登録ボラさんへメールで配信。
県センターに収容されている動物たちの情報共有をはじめました。
ボランティア通信は県センターのホームページでご覧いただけます。一号には所長さんからの挨拶も載っていました。
現在の県センターは登録ボラさんと密に連絡をとりあい協力しあい、譲渡数を上げています。
また、処分するとなればそのことについても情報がまわるそうです。
職員さんから聞いたひとつの例は、気が荒く譲渡が難しそうな犬の話でした。
登録ボラさん達もそういう子の引き出しはためらいがちで、ずっと県センターで収容していたのですが、
いよいよ、その子の譲渡は厳しいという見解から処分を決定。登録ボラさんたちにもそのことをメールで報告します。
すると、処分するくらいならうちで引き取ります、と手をあげるボラさんが出てきたため、その子の処分はやめて、
登録ボラさん宅で様子を見ることになったそうです。
その犬は、収容施設からでて、人のいるおうちでゆったりと過ごすことによって、
ずいぶんと人にも慣れ、落ち着いたそうです。
登録ボラさんたちから理解を得ないまま処分することはしない、と職員の方はおっしゃっていました。
登録ボラさんと共に、問題に向き合い、助け合い、乗り越えているのだと感じました。
殺処分ゼロのポイントB 野犬がいない
県センターの管轄に野犬はいないそうです。
野犬(の成犬)は人に慣れていない、どこまで慣れるかも未知数のため、無責任に譲渡することができません。
そのため野犬がいる地域では処分せざるをえない現状があります。
(子犬は譲渡にまわしている地域が多いです)
もちろん、トレーニングすれば野犬も人と暮らせる可能性はありますが、その時間と労力をかけることができる施設は多くないはないのです。
とはいえ、今後もゼロを続けられるかはわからない…
全国で見れば、この県センターに収容されるいぬねこの数は多くはありません。
そして、どちらかというと登録ボランティアさんの協力も多く得ることができる地域です。
そのような状況の中で、この3つのポイントもあり、ゼロにつながったという印象を持ちました。
しかし、この1年はたまたま、犬も猫も処分をせずにすんだけれど、
たとえば病気でもう安楽死した方がいい子がいれば、
そうすることになる、と職員の方はおっしゃいました。
犬は2年連続ゼロ、猫は初のゼロ。
ボランティアさんと職員さんの並みならぬ努力で達成した夢の数字が
今後も続くことを願うばかりです。
神奈川県にお住まいの皆様、ペットを飼うときはぜひ、
県センターや登録ボラさんからの引き取りをご検討ください。
そして、当たり前のことですが『終生飼育』をどうかお願いします。